最重要プロデューサー、“Oneohtrix Point Never”(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー) ことDaniel Lopatin(ダニエル・ロパティン)。自身の作品では刺激的なヴィジョンとサウンドをアルバムごとに提示し、また、ザ・ウィークエンドやモーゼズ・サムニーをはじめ様々なアーティストの転機作や代表作にプロデューサーとして関わってきたロパティンのコア・プロジェクトであるOPNの原点の振り返りであり、集大成であり、同時に最新型となるのが『Warp』からの4作目のアルバム「Magic Oneohtrix Point Never」である。
OPNの名前の起源から着想を得て、本作は朝に始まり夜通し続いて終わるひとつのラジオ局を聴く体験を模したものになっている。朝の挨拶で始まり、中盤はポップ音楽の断片が挿入され、終わりにかけてよりディープな展開へと至る。だがそこにはOPNらしくエラーや異物感がふんだんに含まれており、アメリカの古いFMのジングルやDJの決め台詞のサンプルがニューエイジの自己啓発の文句とぶつかり、ダークなユーモア感覚を生み出している。ニューエイジを脱構築したサンプル・コラージュの傑作「Replica」のような展開、『Warp』での初作にしてOPNの名前を広く知らしめた「R Plus Seven」における静謐な旋律、「Returnal」の強力なノイズ、「Garden Of Delete」や「Age Of」でのポップ・ミュージックへの意識的な接近、あるいは映画音楽の仕事を思わせる交響曲的な構築といったこれまでのOPNの音楽的要素を自在に行き来しながら、架空のラジオ局というコンセプトのもとそれらは奇妙に統合されている。
世界的なパンデミックという奇妙な事態に世界が飲みこまれ、多くのひとが外部との接点をインターネット以外に失うなか、ロパティンは偽のニューエイジ音楽とソフト・ロックが流れる偽のラジオ放送「Magic Oneohtrix Point Never」を通して、変わらず現代を鋭く批評しているのである。
強烈なインパクトを持つアートワークを手がけたのは、ロパティンとはノイズ・シーンでの関わりから古くからの友人だったというロバート・ビーティ。テーム・インパラの『Currents』やケシャの『Rainbow』などサイケデリックなアートワークで知られる彼とOPNとの共作となっている。
01: Cross Talk I
02: Auto & Allo
03: Long Road Home
04: Cross Talk II
05: I Don’t Love Me Anymore
06: Bow Ecco
07: The Whether Channel
08: No Nightmares
09: Cross Talk III
10: Tales From The Trash Stratum
11: Answering Machine
12: Imago
13: Cross Talk IV / Radio Lonelys
14: Lost But Never Alone
15: Shifting
16: Wave Idea
17: Nothing’s Special
(2020年10月30日発売)