イノヤマランドとパスパルトゥー・デュオ によるコラボ作品が完成!湯河原から発信された周囲の環境と互いを調和するサウンド。
パスパルトゥー・デュオはニコレッタ・ファヴァリ(イタリア)とクリストファー・サルヴィト(イタリア/アメリカ)によって結成され、2015年以来世界を旅して「スローミュージック」と呼ぶ創造的な楽曲を発表している。著名なアーティスト・レジデンスのゲストや文化スペースでのライブ・パフォーマンスなど彼らはカテゴライズされる事なく活動して来ました。定住地を持たない彼らの音楽的巡礼の旅は最初2019年に日本を訪問。この時に環境音楽と深く結び付いた事でサウンドに没頭し、2023年に日本を再び訪れた彼らは井上誠と山下康によるイノヤマランドの音楽に再会します。イノヤマランドは細野晴臣がプロデュースしたアルバム「Danzindan-Pojidon」(1983年)やグラミー賞にノミネートされたコンピレーション・アルバム「KANKYO ONGAKU」(Light in The Attic Records)のリイシューも含めて世界的に高い評価を得ているデュオ。ニコレッタはイノヤマランドに連絡を取ることに成功し、彼らの熱意が受け止められて今作の即興セッションを行う事になったのです。
「デュオであることの意味、そして音楽を通じて人々がつながることの意味を深く考えている」
今作『レディオ・ユガワラ』は2023年に井上誠の故郷である湯河原でレコーディングされました。彼の実家は幼稚園を運営しており敷地内のホールで行われたのです。パスパルトゥー・デュオが到着するとホールには4つのテーブルの輪が用意されていました。テーブルには、ハンドベル、グロッケンシュピール、木琴、リコーダー、メロディカ、ハーモニカなど子供用の楽器が丁寧に並べられていたのです。テーブルの周りには様々なベルやウィンドチャイムが吊るされた棚があり、この環境の中でそれぞれの演奏者は自分の電子楽器をセットアップしました。(1)「電子楽器のみ」、「アコースティックのみ」、「両方のミックス」、(2)「お互いのデュオ」のメンバーを交代して演奏する「4通りのデュエット」、(3)「制約なしに自由に演奏」の3つのセッションに時間が分けられ3時間以上の音源を制作。期待感の高まるオープニング”Strange Clouds”ではシンセサイザーのベッドとクロマプレーン(パスパルトゥー・デュオが設計したタッチレス・インターフェイスと無限のオーガニック・サウンドを特徴とする手製のアナログ楽器)を使って作られた緑豊かな風景を描くサウンドで、アルバム11曲の下地となっています。”Abstract Pets”ではパーカッシブなパルス音が作品の心臓となりアーシーなサウンドがきらめくグロッケンシュピールやウィンドチャイムを迎え入れています。
“Simoom”と“Tangerine Fields”では渦巻くシンセ・ラインとサブリミナル・ビートが天候の変わり目の様に変化し、牧歌的な“Observatory”と“Mosaic”はで深い海を照らす様なサウンドを展開。別世界の雰囲気を纏った“Xiloteca”では催眠術のようなアルペジオ・シンセ・ラインが戯れるようなアンビエンスで心地よい子守唄を奏でる’Solivago’へと繋がって行くのです。エンディング曲“Axolotl Dreams”ではエレガントで牧歌的なコード・ストロークと高揚感のあるシンセがリスナーに偶然の出会いを想起させてくれます。
『レディオ・ユガワラ』は特定の場所と時点から発信される二度とないユニークなものなのです。それぞれのデュオのアプローチはお互いの”調和“であり、自分自身や湯河原を取り巻く自然への調和と言えるでしょう。異世界を旅する波のように音は宇宙を旅して探し求めなければ永遠に失われてしまいます。楽器の中にハーモニーの親和性を見出し織り成す演奏の中に精神的な親和性を見つけることで、今作の核心はフィーリングや親密な人間関係の解釈であり、発見することの真髄を表していると言えるのです。
「このアルバムはある場所から発信されるものであると同時に周囲の環境と互いに調和する存在です。このような刹那的な瞬間の音楽は能動的な創造というよりも、すでにそこにある何かを発見することなのです。」
01: Strange Clouds
02: Abstract Pets
03: Simoom
04: Tangerine Fields
05: Observatory
06: Mosaic
07: King in a Nutshell
08: Xiloteca
09: Solivago
10: Berceuse
11: Axolotl Dreams
12: Paper Theater *CDのみボーナストラック
(2024年9月6日発売)